蛍光材料と燐光材料
人間の感覚的に二つの材料を区別すると、材料に光を当てて光を遮断したときにすぐに消えるのが蛍光で、しばらくボオッーと見えるのが燐光である。励起状態になった後エネルギーを失うまでの時間をPL寿命と呼ぶが、これがミリ秒オーダー以上が燐光で、マイクロ秒以下であれば蛍光といえる。
もちろん寿命が違いがそれぞれの励起状態の違いに起因している。再結合で分子が励起状態になる場合に、1:3の割合で一重項励起子と三重項励起子が生じる。一重項励起子と三重項励起子の違いは励起準位にある電子のスピンの向きが基底状態と違うか同じかということに起因している。
有機材料は基本的に結合が完全であるので、すべての準位にある電子は必ず2個対になっている。また電子はスピンを打ち消すように準位にある。再結合により分子が励起状態になったとき、励起準位にあるスピンの向きが打ち消し合っていれば、励起一重項状態である。スピンの向きが同じであれば、励起三重項状態である。この場合スピンの向きが同じ場合でも、異なる状態が3つあり、三重に縮退している。
基底状態は元々一重項準位なので、励起一重項準位から電子が失活する場合には、電子のスピンはそのままで失活できる。ところが基底三重項準位というものはないので、励起三重項準位から失活する場合にはスピンが反転しなければならない。これは禁制遷移となり、遷移できないことになる。ところが、スピン相互作用により確率的に0ではなくなる。結果的には禁制が確率的に解けたときにスピンが反転して基底準位に戻る。結果として、励起三重項状態からの失活は時間がかかる。励起準位にいる時間が長い、寿命が長いとなる。
寿命が長いと基本的に不利になるのは、発光として失活せずに熱として失活する確率が高くなる。それゆえ燐光材料は有機EL材料として不向きであった。
燐光材料を利用した有機EL素子