有機エレクトロニクス

有機エレクトロニクスとは?

 *半導体が目標!?
現在利用されているエレクトロニクス材料の大半は無機材料である。特に産業の心臓と言うべきは半導体であり、能動素子として現在の我々の生活を支えていると言っても過言ではない。しかし人間を初めとする生物はおおよそ炭素化合物(といってもグラファイトやダイアモンドではない)である有機材料で構成されているし、エネルギーロスも少なく動いている。生物に比べれば半導体が実現できている事はまだまだ大したことではない。
半導体を越えたスーパーデバイス!!! 
しかし生物のような超高機能なデバイスを人工的に実現することは簡単ではなく、その実現には多くのステップを踏まなければならない。現在の有機エレクトロニクスは直接的には機能的に先行する半導体デバイスを目標にしているため、単に半導体を有機材料に置き換えるようなイメージを持たれてしまうが、目指す目標は半導体ではできない機能を持った新しいコンセプトもしくは生物的なコンセプトに基づくデバイスを開発する。

・研究テーマ

 本研究室では次のような研究テーマを考えている。ただし有機EL素子は本来有機エレクトロニクスに含まれるが、別項として詳細に取り扱っている。

1.有機EL素子の基礎研究と応用・開発

    

 有機EL素子はとにかく薄い!素子の厚みは基板の厚みと封止層の厚みで決まります。当研究室では、低分子有機ELと高分子ELの両方を検討しています。ただし、ご存じのように実用化されたものは低分子有機ELです。

2.色素増感太陽電池の高性能化のための基礎研究

    

 太陽電池は高品位な自然エネルギー利用の最右翼のデバイスですが、現在は電力発電用としては シリコン結晶太陽電池が主に使われています。しかし太陽電池用のシリコン結晶というのは簡単にいうと半導体デバイス用としては利用が適さないくず結晶なんですね。しかもシリコン自体は埋蔵量が多いようなイメージがあり、日本でもかなりあるような感じがしますが、実際は高品位なシリコン原石を利用するので、埋蔵量も現状では原油みたいな感覚です(低品位な原石でも利用できる技術の開発とコストバランス)。そこで酸化チタンナノ微粒子を焼結させた電極を作成し、その表面に有機色素を吸着させた色素増感太陽電池が開発されました。半導体と有機色素を組み合わせた光増感現象は古くから知られていたのですが(松村・坪村 Nature)、一枚の平面ではそれほどの効率は得られませんでした。1991年にスイス・ローザンヌ大学のGraetzel博士が上記の提案を行いました。その結果、単位面積当たりの表面積は約2000倍にもなり、変換効率が10%を超える太陽電池ができるようになりました。現在当研究室では、新型構造素子の開発と電解液の固体化について研究しています。

3.有機薄膜太陽電池の高性能化のための基礎研究

    

 色素増感太陽電池は電解液を利用しているので、固体化技術が開発目標に掲げられています。しかしながら、本来太陽電池は固体によって形成させれているのが、非常に好ましいですね。そこで有機EL素子と同様な多層の有機層を組み合わせて、太陽電池を作ることができます。実はこちらの提案もコダックのTang博士です。有機ELの先立つこと1986年のことです。こちらでも低分子型と高分子型の二種類がありますが、有機ELと異なり、太陽電池では高分子型の方が今のところ効率がよいようです。当研究室では、真空蒸着を利用した低分子型太陽電池と塗布法を利用した高分子型太陽電池の両方を検討しています。

4.塗布型有機薄膜トランジスタための基礎研究

    

 有機薄膜トランジスター(TFT)は、電界によりキャリア蓄積層を生じさせ、ソース-ドレイン間に導電チャネルを形成させることにより、電極間の電流量を制御します。半導体のMOS型電界トランジスター(FET)は電界によって反転層を形成させて少数キャリアを利用するのですが、TFTでは蓄積層を利用します。当研究室では塗布で作成できる有機TFTを開発中(悪戦苦闘中?)です。


 更新 2008.12.24