有機系太陽電池

太陽電池とは

太陽電池というのは、光のエネルギー(太陽光)を電気エネルギーに変換する光電変換素子を電源として見なした言い方になります。ですから個々の素子は電池というより、本来はミニ発電器とでもいうべきものです。特徴としては、燃料がいらないこと、駆動部分がないので静音性が高く、メンテナンスがほぼ不要といえます。ただし、太陽が沈んでいる夜間は発電できないのがデメリットになります。

その必要性

現在利用されている太陽電池の大部分はシリコン系太陽電池です。特に電力用として利用されているものは、結晶太陽電池と多結晶太陽電池になります。これ以外にはアモルファス薄膜を利用した太陽電池があります。シリコンは半導体産業と材料が思いっきりかぶっていますので、現在の太陽電池の生産はシリコンの生産量に大きく依存しています。そのため、将来の太陽電池の需要を満たすためにはシリコン系ではない、低コストな新しい太陽電池を開発しなければなりません。それが有機系の太陽電池です。

種類

有機系の太陽電池には、次の二種類があります。

・色素増感太陽電池

半導体の表面に吸着した色素の光吸収によって光電流を取り出します。これを色素増感といいます。平面では光に対して1回しか光を吸収する機会がありませんので、光が通過する間に半導体と色素の界面を多く挟み込むことが必要です。そこで、1991年にスイス ローザンヌ大学のGr?zel博士が、酸化チタンナノ粒子を焼結した電極を利用して、有効面積を1000倍以上にした太陽電池を作成しました。これが色素増感太陽電池です。博士の名前をとって、グレッツェルセルとも呼ばれます。酸化チタンと有機色素のハイブリッドデバイスです。

色素増感太陽電池の構造

・有機薄膜太陽電池

有機薄膜だけを利用した太陽電池ですが、1986年以前は有機と金属界面のショットキー接触を利用したショットキータイプ太陽電池でしたが、効率はコンマ数%程度でした。ところが積層型有機ELで名高いC. W. Tang博士が有機ELを発表に先立ち積層型(ドナーとアクセプタ材料の組み合わせ)の太陽電池を開発されました。これがほぼ変換効率1%でした。現在では、バルクへテロ構造(ドナーとアクセプタ材料を混在させる)により、5%を越える変換効率までになってきています。

C. W. Tang博士(現ロチェスター大学教授)の研究室にて

有機系太陽電池の特徴

・投入エネルギーを少なく生産できる
・非常に簡単なプロセスにより作成できる(真空蒸着、キャスト法、焼結)
・シート状の太陽電池の作成も可能で、壁紙などに利用し拡散光も簡単に利用できる。
などの特徴を持っています。