1.有機EL素子の分類

よく材料によって低分子材料系と高分子材料系に分けられますが、そのこと自体はほとんど意味がありません。また低分子系は真空蒸着法、高分子系はキャスト法(インクジェット、印刷含む)で作成すると言われますが、これも誤解が含まれています。

高分子材料は真空蒸着のような手法を利用すると気化する前に激しい自己分子運動により、主鎖が切断して低分子化してしまい、本来の能力が低下してしまいます。それゆえ真空蒸着法では作成できないのです。

ですが元々導電性高分子は可溶性ではなく、ほとんどのものが不溶性でした。そこで可溶性を向上させるためにアルキル基などを分子構造に導入して、可溶性を高めてキャスト法で作成できるようになりました。結果として有機ELに用いている材料は可溶性を有しているのです。

一方、低分子系では真空蒸着という手法があるために、あえて可溶性のある置換基を導入しなくてもよかったので、可溶性という観点から分子設計はあまり行われなかったのです。ですが低分子材料もキャスト法で作成することはできます。有名なAlq3も有機溶剤に溶かしてキャスト法で作成することができます。

なぜ低分子系では可溶性を高めようとする試みはあまり行われなかったのでしょうか?それは低分子系では有機ELの性能を最大限に引き出すために多層構造化による最適化が行われました。それを実現するためにはいったん形成した下部膜を融解するようなキャスト法による素子化はほとんど意味がなかったという点が上げられます。

低分子系と高分子系の最大の違いは、その材料構成にあります。低分子系では徹底した高純度化が図られ、ホモ構造であっても繰り返し単位が異なるだけで不純物構造として取り扱われます。一方、高分子系では単一分子量ではないので分子量分布に幅があります。すなわち、低分子では不純物とされるような分子を多く含んだ混合材料系であります。その点が決定的に違っています。

ですから材料の分子量的な意味で有機ELを分類することは全く意味がありません。