愛知工業大学 機械学科 流体工学研究室 (江上研究室)

研究内容(JKA助成)

本研究室では,2020年度,平成25年度及び平成26年度に公益財団法人JKAの機械工業振興補助事業(研究補助)を受けて以下の研究を行っています.

平成25年度(2013)マイクロ配列化した複合分子センサによる高速多変量同時計測法の開発(25-143)

平成26年度(2014)ドット配列複合分子センサによる多変量同時計測の高精度化補助事業(26-166)

2020年度圧力・温度複合センサシート作成法の確立と多変量同時計測の実現(2020M-175)

 これまで模型上の圧力と温度分布を同時に計測するために感圧塗料(PSP)と感温塗料(TSP)を塗り分けた複合センサの開発を行ってきた.複合化に際し,PSPとTSPを混合すると色素間干渉により特性の劣化が生じる.そのため,特性劣化の生じない複合センサとして図1のように微細に塗り分けたセンサを開発してきた.これまでインクジェット装置やニードルディスペンサを用いることで,優れた時間応答性を有する複合PSP/TSPセンサを開発することに成功した(2013-2014年)[1-3].しかし高価で特殊な装置を使用し,作成にも時間を要するため,誰でも容易に作成するというわけにはいかず,一般への普及という点では課題が残っていた.そこで,本研究では,シルクスクリーン印刷の技術を応用することで,誰でも安価かつ短時間に複合センサを作成できる方法の開発に取り組んだ.

画像の説明

図1 PSP-TSP複合センサの配置の模式図

図2は予備試験で作成した様々な間隔で作成したセンサドットである.ドット間隔0.5mm程度までは十分この方法で作成可能であることが分かった.これまでインクジェット等で作成する場合は円形のドットを多く用いてきたが,隙間を最小化するため今回は正方形のマスクでセンサを作製した.図3がセンサ作成に使用したシルクスクリーン印刷と同じ製法で作成したマスクである.0.5mm, 1mm, 2mmの間隔ものを作製した(図は2mm間隔).

様々な間隔で作成したセンサドット

図2 様々な間隔で作成したセンサドット

シルクスクリーンのマスク

図3 シルクスクリーンのマスクの一例(ドット間隔2mm)

図4(左)は実際に作成した複合PSP/TSPである.スクリーンをサンプル面上に設置し,スプレー塗装によりPSPとTSP色素を塗布することで作成されている.右図は励起光を照射されて発光しているサンプルである.励起には図5(左)の高輝度LEDを用い,センサからの発光強度/発光寿命の計測をPCO社製CCDカメラで用いて行った.またサンプルのスプレー塗装には旭サナック社製の自動塗布装置を用いた.自動塗布装置で作成したサンプルを従来の人間によるスプレーガンを用いた塗布サンプルと比較したところ,より一様なサンプルを作成することができた.また,自動塗布装置は塗布条件(塗布時のスプレー速度,距離,空気圧など)をセットすれば再現性高く塗布できるため,最適条件を見出すのがより容易となった.

複合PSP/TSPサンプル  励起されたサンプル

図4 作成された複合PSP/TSP(左)と光励起されたサンプル(右)の一例

高輝度LED CCDシャッターカメラ  自動塗布装置 rCoater

図5 研究助成で購入した装置:高輝度LED (HARDSoft社製)(左),CCDシャッターカメラ(PCO 社製)(中央),rCoater(旭サナック社製)(右)

サンプル比較

図6 手動及び自動塗布装置を用いた塗布サンプルの比較

作成した複合PSP/TSPサンプルの特性評価をしたところ
圧力感度0.75 %/kPa, 応答時間26µs,温度感度0.75%/℃とPSP,TSP単体のセンサとほぼ同等のセンサを作成することができた.
また,噴流を吐出した実証試験を行ったところ,圧力と温度分布を同時に計測する事ができた.このときの計測精度は従来のPSP/TSPと同等のものが得られた.
以上のように,シルクスクリーンをマスクとして用いることで,複合PSP/TSPセンサを安価かつ短時間にだれでも容易に作成できる方法を開発することができた.これにより,より多くの分野に応用されることが期待される.

詳細な結果は学会や投稿論文等で発表する予定である.

  1. T. Kameya, Y. Matsuda, Y. Egami, H. Yamaguchi, T. Niimi, "Dual luminescent arrays sensor fabricated by inkjet-printing of pressure- and temperature-sensitive paints", Sensors and Actuators B: Chemical, Vol.190, (2014), pp. 70– 77.
  2. 上山淳一,古川聖,亀谷知宏,松田佑,山口浩樹,新美智秀,江上泰広,「陽極酸化被膜上のマイクロドット型PSP実現のためのインクジェット塗布条件」,日本機械学会論文集, Vol.80, No.811, (2014), p. FE0040.
  3. Y. Egami, J. Ueyama, S. Furukawa, T. Kameya, Y. Matsuda, H. Yamaguchi, T. Niimi, "Development of fast response bi-luminophore pressure-sensitive paint by means of inkjet printing technique", Measurement Science and Technology, Vol.26 (2015) 064004 (8pp).

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