2013JKA
本研究室では,平成25年度(2013)に公益財団法人JKAの機械工業振興補助事業(研究補助)を受けて以下の研究を行いました.
平成25年度マイクロ配列化した複合分子センサによる高速多変量同時計測法の開発(25-143)
複合感圧塗料は感圧塗料と感温塗料の両方の特性をもつセンサである.しかし,感圧塗料と感温塗料は同平面上に塗布すると,異なる色素同士の干渉により特性の劣化が生じてしまう.そこで本研究では,ニードル式ディスペンサ(図1)を用いることでドット状に塗り分け,この問題の解消に向けて研究している.
図1 ニードル式ディスペンサ
図2 ニードル式ディスペンサによるセンサ溶液の塗布
図3 複合感圧塗料からの発光
図3は感圧塗料(PSP)と感温塗料(TSP)を複合化した複合感圧塗料の発光をCCDで撮影したものである.この図では,感圧塗料,感温塗料両方の波長を透過させるフィルタを使用している.実際の計測では,PSP,TSPからの発光を分離して測定する必要がある.そのため,図4のような透過波長のフィルタを用いてPSP,TSPの分光を行った.これらのフィルタをそれぞれのカメラレンズに設置し複合塗料の発光の測定を行った.
図4 複合感圧塗料のスペクトルと使用フィルタ
感圧塗料における高精度測定を行うためには,温度による誤差の補正が重要である.作成した複合塗料により圧力と温度の同時測定が可能となったので,TSPによるPSPの温度誤差低減効果について調査した.図5は圧力50kPa一定環境下における(a)20℃と(b)30℃における発光強度を比較したものである.図5(b)では温度上昇に伴い発光強度が減少し,圧力測定値は54.2kPaとなり,真値の50.0kPaに対して8.40%(0.84%/℃)の測定誤差が生じた.これは通常のPSPによる温度誤差(0.5~1.0%/℃)の範囲であり,温度変化による発光強度の変化が圧力測定値の大きな誤差源となっていることがわかる.次に感温塗料により,温度変化を測定したところ30 ℃では,30.3 ℃という測定値が得られた.この値を利用して図5(b)の画像を補正すると,図6(b)のようになり図6(a)の基準画像とほぼ同じ画像が得られた.温度補正後の圧力測定値は50.2 kPaとなり,測定誤差は0.4% (0.04%/℃)と温度による測定誤差を大幅に低減することに成功した.
(a) 基準画像 (50kPa, 20℃) (b) 温度上昇後画像(50kPa, 30℃)
図5 温度による感圧塗料の発光強度変化
(a) 基準画像 (50kPa, 20℃) (b) 補正後画像(50kPa, 30℃)
図6 感温塗料による温度補正後の感圧塗料の発光強度