愛知工業大学 機械学科 流体工学研究室 (江上研究室)

2014JKA

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本研究室では,平成26年度(2014)に公益財団法人JKAの機械工業振興補助事業(研究補助)を受けて以下の研究を行いました.

平成26年度ドット配列複合分子センサによる多変量同時計測の高精度化補助事業(26-166)

 感圧塗料(PSP)は温度依存性があるため,高精度測定のためには感温塗料(TSP)温度補正が必須である.しかし,単純に両者を混合すると色素間干渉による特性の低下や劣化が生じてしまう.そのため,ニードル式ディスペンサやインクジェット装置を用いてPSPとTSPをマイクロドット配列に物理的に分離して塗布することで,複合化を図った.これにより,色素間干渉を防ぐことができるだけでなく,PSP, TSPそれぞれのセンサ色素に適した溶媒やポリマを用いることができることができるようになる.

 本年度はドットの詳細を観察するために蛍光実体顕微鏡(図1)と,圧力校正試験を精密に行うための圧力コントローラ(図2)を,JKA助成金で購入し,研究を行った.

蛍光実体顕微鏡 SMZ18-FLB2

図1 蛍光実体顕微鏡 SMZ18-FLB2

圧力コントローラ GE PACE5000

図2 圧力コントローラ GE PACE5000

- 分子センサの微視的観察
 これまでの研究で色素の基板上での微視的な分布が特性に大きな影響を及ぼしていることが分かった.図3-5は蛍光顕微鏡を用いた表面観察の結果である.図3はニードル式ディスペンサを用いて作成したドット(直径0.3mm), (c)は浸漬によって作成した陽極酸化被膜型のPSP(AA-PSP), (c)は同じくスプレー塗布で作成したポリマー型のPSPである.それぞれの図の左下が全体図,左上が蛍光顕微鏡で観察した発光強度分布(1mm x 1mm),右が20kPaと100kPaの発光強度の比を取った,圧力による発光強度の変化を示した図(0.2mm x 0.2 mm)である.右図をみると,微視的には発光強度比が場所ごとに若干異なっていることがわかる.また,スプレー塗布のサンプルが最も特性のバラつきが大きくなった.

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図3 ニードル式ディスペンサによるドット

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図4 浸漬で作成したAA-PSP

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図5 スプレー塗布で作成したポリマー型PSP

- 溶媒によるドット形成と特性の変化
 インクジェットやニードル式ディスペンサでドットを作成する上で,センサ特性に最も大きな影響を与えるのは,色素を溶解する溶媒である.この溶媒によって,ドット形成と特性にどのような影響が生じるのか試験を行った.図6に示すように溶媒にトルエンやエタノールを用いると顕著なコーヒーリングが形成された.それに対して,ジクロロメタンやクロロホルム,ヘキサンを用いるとより一様なドットを作成することができた.ジクロロメタンは蒸発速度が速いため,より蒸発速度の遅いヘキサデカンを2wt%混合したところ,さらに良好なドットを形成することができた.
 
 さらに溶媒を変化させると,同じ色素を用いていても圧力感度や発光強度などに影響があることが分かった.図7は色素にPtTFPPを用い,溶媒を変化させたときの圧力感度の変化を示したものである.ジクロロメタンやヘキサンのみの場合よりも,それらにヘキサデカンを混合し,蒸発速度を遅らせたものの方が,圧力感度が高くなり,PSPとして適した特性を示した.このように乾燥過程における感圧色素の分散が発光強度分布や,発光強度,圧力感度に大きな影響を及ぼしていることがわかった.

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図6 溶媒によるPtTFPPのセンサドットへの影響

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図7 溶媒によるPtTFPPの圧力感度への影響

- 複合センサの形成
 図8にPSP-TSP複合センサの配置の模式図を示す.図9が実際にインクジェット装置で作成したPSP-TSPの複合センサである(左図).適切な光学フィルタを用いることで,PSPのみ(中央),TSPのみ(右図)のみを観察することができる.
 この複合センサを用いて,100kPa, 20℃を基準として,50kPa, 0℃に圧力と温度双方を変化させた場合の測定誤差について評価を行った.温度補正なしのPSPのみだと,真値50kPaに対して測定値が30.6kPaと-20℃の温度差によって-19.4kPa(-0.97%/℃)の測定誤差が生じた.TSPによる温度測定値は真値0℃に対して-0.39℃であり,この値を用いて補正を行った後の圧力値は49.8kPaと,-0.02kPa(-0.01%/℃)まで温度変化による測定誤差を減らすことに成功した.

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図8 PSP-TSP複合センサの配置の模式図

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図9 作成したPSP-TSP複合センサ

- PSP-TSP複合センサの時間応答
 次に高速応答複合センサの時間応答性の評価を行った.時間応答の評価には図10に示す衝撃波管を用いた.衝撃波管はステップ上圧力変化を作り出すことができるので高速の時間応答の評価に最適である.複合センサは衝撃波管の端面に設置し,特定の波長をもつ光源で励起されたセンサからの発光を光電子増倍管(PMT)で観測した.
図11は時間応答試験の結果を示したものである.温度補正を行うことで,衝撃波通過後の圧力ドリフトが軽減されているのがわかる.また無次元圧力が90%に達した応答時間は17.8±0.8μs と通常の浸漬型陽極酸化PSPとほぼ同等の応答時間が得られた.これにより,高速で変化する圧力場においても,温度を同時計測することが可能になり,PSPの温度誤差を補正することが可能になった.

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図10 衝撃波管における時間応答試験の模式図

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図11 PSP-TSP複合センサの時間応答

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