ローマ軍がブリテン島にやって来る以前、ケルト人が広くこの島に住んでいた。ウェールズ地方に移り住んで行ったケルト人がその後ウェールズ人と呼ばれるようになったのだが、かれらの言語は広くイギリスの地名にその跡をとどめている。
afon
シェイクスピアの生地、Stratford-upon-Avon は「エイボン川のほとりのストラットフォード」を意味するが、このエイボン(Avon)はウェールズ語の「アボン」、であり、「川」を意味する。普通名詞が固有名詞になってしまった例である。
wy
「水」を表すウェールズ語に“wy”がある。イングランドとウェールズの境を流れるWye(ワイ川)は“Gwy”というウェールズ語から派生した語で、「曲がりくねった川」の意味になる。また北ウェールズの城と城壁で有名な町Conwy(コンウイ)は「力強い川」の意。
coed
スコットランドの都市、グラスゴー(Glasgow)はGlasーcoed、すなわち「緑の森」を意味する。ウェールズの地名に頻出する“coed”は、したがって「森」を意味する。
Caer
Caerはローマ軍の砦を意味し、ニューポート近郊のカーレオン(Caerleon)や北ウェールズの名城カーナーボン(Caernarfon)など、ウェールズの地名には欠くことができない。Caerleonはウェールズにおけるローマ軍最大の基地であり第2アウグストウス軍団の本営駐屯地であった。またCaernarfonはCaerーyn-Arfon、すなわち「アルボンにある砦」の意味になる。
bridgend
ブリジェンド(Bridgend)とは「オグワ川の橋のたもと」という意味のウェールズ語の英訳の一部、bridge end からできた地名。
Swansea
スウォンジー(Swansea)は英語の意味からすると「白鳥の海」ということになる。しかしこの語源は諸説入り乱れ、決め手に欠く状態である。スウォンジーのウェールズ語名は Cae Wyr、すなわち「ガッワーの砦」を意味するが、 英語名Swanseaに関しては、人名説、北欧語説と様々だが、おもしろそうな話としては、その昔、スウォンジー湾で嵐のため壊滅したデーン人王スウェイン(Sweyn)の艦隊を記念してSweynの海、Sweyn-seaとなったという説もある。しかし未だに決め手はない。
llan
Llan(ラン)はウェールズの教会を意味する言葉であり、ウェールズの地名には頻出する。世界最長の村の名はニュージランドにあるマオリ族の村で83の綴りからなると言われているが、定かでない。世界一、二を争う長い地名はLlanで始まり、58文字である。
Llanfairpwllgwyngyll-gogerychuyrndrobwll-llantysiliogogogoch
通称Llanfair P.G. その意味は、「赤い洞窟の中にあるシシリオ礼拝堂の近くの、激しい渦のそばの、白いはしばみの森の泉のほとりにある聖マリア教会」という。北ウェールズ、アングルシー島にある。