固相抽出を利用する水道水中のフェノールの高感度吸光光度法

酒井 忠雄,手嶋 紀雄,粥川 真帆,沢村 里
分析化学, 49, 677, (2000).

緒言

•フェノール類はフェノール樹脂の原料や医薬品、化粧品の原料として工業的に広く用いられている。特にフェノールは反応性が高いので利用範囲も広い。経口吸収によるフェノール水溶液の毒性は、ラットでLD50(50%致死量)0.53g/kg、イヌでは0.5g/kgと報告されている。この数字は、毒性としては高い方ではないが、高濃度フェノール類を短期、あるいは長期に暴露すると様々な生理的影響が表れると報告されている。
 フェノール類の定量法としてはJIS K 0102(工場排水試験方法)に4-アミノアンチピリン吸光光度法(4-AA法)が定められており、フェノール類の低濃度範囲ではクロロホルムを用いる溶媒抽出法が規定されている。しかしその検出感度は不十分であるために種々の濃縮法が検討されたが、いずれもJIS K 0102に準ずるものではない。そこで4-AA法の高感度化を目的に、Sep-Pak C18及びPorapak RDXを用いる濃縮法を検討したところ、簡便に10~100倍濃縮が可能となったので報告する。

実験操作

結果

•Sep-Pak C18を用いた方法では100倍、Porapak RDXを用いた方法では50倍に濃縮しても濃度と吸光度の間には良好な直線関係が見られた。
  また水道水に対して添加回収実験を行ったところ、いずれも非常に良好な回収率を得た。