●天然素材から得た炭素化物多孔体への熱分解炭素のCVIとリチウムイオン二次電池負極特性

 市販のリチウムイオン二次電池の負極には、黒鉛が用いられていますが、理論容量に限界(372mAh/g)があります。一部の結晶性の低い炭素材料は、黒鉛よりも高い容量を示し、精力的に研究が進められています。その中で、紙繊維や木材など天然素材の炭素化物も高い容量を持つ可能性を秘めており、安価なため、負極材料として魅力的です。さらに、廃棄物リサイクルの観点からも興味深い材料であります。しかし、これら低結晶性炭素の持つ問題の一つに、初回充電で用いた容量のうちどれだけが放電で取りもどせるかを示す初期クーロン効率が低い、つまり電池として利用できない大きな容量ロスがあるという点が挙げられます。
 この役立たずの容量の低減という課題に対し、私達の研究室では、負極材料の、表面修飾という側面からアプローチを行っています。これまでに、パルスCVIという手法を使い、気体原料から、ナノメータースケールの非常に薄いパイロカーボン膜をコーティングすることで、働きものの容量(可逆容量)を低下させることなく、役立たず容量(不可逆容量)の大幅な低減を達成しております。


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