YANS2025 参加報告(アクトシティ浜松)

2025.9.25

愛工大徳久研究室のB4の市川です。2025年9月17日〜9月19日に開催された第20回言語処理若手シンポジウム (YANS2025) で発表し、光栄なことに「デモ賞」および「奨励賞」を受賞しました。

これからYANSに参加される方に向けて、YANS2025の参加報告を書きたいと思います。

YANSとは?

YANSは自然言語処理および関連分野の参加者の相互交流と成長の場を提供することを目的として開催されるシンポジウムです。 名前の通り学生や若手技術者が多く参加しています。自然言語処理および関係分野の研究を始めたばかりの方の発表や、始まったばかりの研究を奨励している点が特徴です。 近年は規模も拡大しており、今回のシンポジウムでは発表が257件(学生202件、社会人55件)、参加者は570人(学生286人、社会人284人)でした。

ハッカソン (9月17日)

今回のハッカソンは、算数の問題を対象に学習データの作成・改善を通じて LLM の性能を高めるというタスクでした。 ハッカソンのチームはYANS運営委員の皆さんが自然言語処理の習熟度に合わせて編成してくださいます。 私のチームはB3が1名、B4が2名、M1が2名、企業の方が1名の計6名で構成されていました。

ハッカソンの作業風景

私のチームではCoTのデータを整備して、SFTの学習を行いました。実際に学習を回してみた結果、CoTのデータを食わせるだけで顕著に性能が上がったことが特に印象的でした。 私の主な役割はデータの整備で、会場で共有された学習データから不適切な設問を削除していくというものでした。 データ整備によりスコアが向上し、今後の自分の研究を考える上でも非常に良い経験となりました。 各チームは運営が用意したテストデータを用いて評価されます。 私たちのチームは、最終的なリーダーボード上の結果は2位でした。 1位との差があと少しだったので悔しい想いをしたものの、最終的に私たちグループはYANS運営委員特別賞を受賞することができました。 互いに協力して真摯に課題に取り組み、このような成果を得ることができてとても満足できたイベントでした。 反省点は、早めの時間に役割分担を明確にできなかった点です。 短い時間の中で最大限の成果を出すために、各自のスキルの棚卸しや役割分担は早めの時間に実施すべきだと感じました。 次にこのような機会があればぜひ今回の経験を活かしたいと思います。

チュートリアル (9月18日、9月19日)

チュートリアルセッションでは、以下の2件のチュートリアルが行われました。

「自然言語処理エンジニアのリアル:プロダクト開発の挑戦と発見」
工藤 拓 氏 (グーグル合同会社)

1日目はグーグル合同会社の工藤 拓先生のご講演がありました。 Google日本語入力は普段から使っているツールですし、MeCabやsentencepieceは研究を進める上で基盤となる技術なので、 その開発者の方の話を直接聞けたことはとても貴重な機会でした。 今回の講演では、研究の知見をプロダクトに落とし込む際の視点や、ユーザー体験を軸に開発を進めることの大切さを改めて感じました。 運用や検証まで含めて地道に積み上げる姿勢に学ぶ点が多く、今後の自分の研究にも活かしていきたいです。

「デジタルネイチャー化する世界と人間―数理・物理・最適化ループによるHCIの再構築」
落合 陽一 氏 (筑波大・ピクシーダストテクノロジーズ(株))

2日目は筑波大・ピクシーダストテクノロジーズ株式会社の落合 陽一先生のご講演がありました。 万博のニュースなどでnull2については見ていたのですが、投影素材や実装環境など、どのような技術で実現されているのかを知ることができ、とても興味深かったです。 実際に開発に携わった方の話を聞けたことはとても貴重な機会でした。

ポスターセッション(9月18日 〜 9月19日)

2日間で5つのポスターセッションが用意され、それぞれのセッションには50件以上の発表がありました。 私は前回のYANSにも参加しましたが、発表件数は前回よりも約60件ほど増えていたようでした。件数が多いので、事前にどの発表を聞きに行くかを選んでおくことが大切です。

ポスター発表とデモの様子

「音声情報と感情情報を用いたリアルタイム顔表情生成」というタイトルで発表しました。 前回参加したYANSでは主著者での発表はなかったので、今回が私の初めての発表となりました。 会場は前回よりも大きく、参加者数も前回以上でとても緊張しました。当日はデモを用いての発表を行いました。 デモを見てもらうことで、より興味を持って聞いてもらうことができたと思います。 そのおかげもあってか、たくさんの研究者の方々からフィードバックをいただき、とても充実した時間を過ごすことができました。 今回もらったフィードバックを糧に、より良い研究へと発展させていきたいです。


交流企画について

交流企画として2日目のお昼にラウンドテーブル、夜にナイトセッションが行われました。 ラウンドテーブルでは興味のあるトピックについて、5〜6人のグループで意見交換しました。 ここでは学生に限らずさまざまな方々と意見を交換することができ、 共感できる部分や新たな視点をたくさん共有し、とても有意義な時間を過ごすことができました。

ナイトセッションでは、軽食を囲んで参加者同士の交流の場が設けられました。 食事の中で特に美味しかったのはデザートの静岡抹茶プリンで、程よい甘さが最高でした。 立食形式ではありましたが、YANS運営委員の方々があらかじめ学年の近い人を同じテーブルに配置してくださいました。おかげで自然と会話が盛り上がりました。 自分の研究に始まり、興味を持っているものや地元のことまで、多くの意見交換ができ、交流が一層深まりました。 席の移動も自由で、当日は幅広い方々と親睦を深めることができました。


表彰について

クロージングにてデモ賞、奨励賞、スポンサー賞が発表されました。とても光栄なことに、デモ賞と奨励賞を受賞させていただくことができました。 奨励賞は、これから始まる、または始まったばかりの研究を奨励することを主旨とするものであり、現時点の研究の完成度よりもアイディアの面白さ、および、新規性や発展性への期待が重視されています。 今回の発表を通して私の研究のアイデアの面白さや今後の発展性に期待していただけたことを大変嬉しく思います。

表彰の様子

おまけ

ハッカソンの後にさわやかのハンバーグを食べに行きました。
さわやかは静岡県内にしかないハンバーグチェーン店で、炭火で焼いた牛肉100%のハンバーグが特徴です。 駅の近くということで、混雑することを予想していましたが、待ち時間15分ほどで入店できました。 ハンバーグは中心がレア寄りで肉汁の豊かさと炭火の香ばしさが際立ち、予想以上のおいしさでした!

さわやかのげんこつハンバーグ

まとめ

YANS2025を通して…

ポスター発表では普段研究室で議論するだけでは得られない多角的な視点から意見をもらうことができ、また、他の研究者の方々の発表を聞くことで、新たな知見を数多く得ることができました。 さらに交流企画を通して、同世代の研究者や企業の方々と議論することで、新たな繋がりを持つことができました。
今後、研究を発展させていくうえで今回の機会はとても有意義だったと強く感じています。
この貴重な機会を与えてくださった、 YANS運営委員の皆様、スポンサー様、そして参加されたすべての方々に感謝申し上げます。
素晴らしい3日間をありがとうございました。

参考リンク

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