YANS2026 参加報告(仙台国際センター)

2026.8.24

愛工大徳久研究室B4の鳥巣です。2026年8月16日〜8月18日に仙台国際センターで開催された第21回言語処理若手シンポジウム (YANS2026) に参加しました。

これからYANSに参加される方や、発表を控えている学生の方に向けて、YANS2026で経験したことを報告します。

仙台国際センターに設置されたYANS2026の案内看板

YANSとは?

YANSは、自然言語処理および関連分野の若手研究者・技術者に、研究交流と成長の場を提供することを目的とするシンポジウムです。 これから始まる研究や始まったばかりの研究も歓迎されており、組織や研究室、業種を越えた議論と交流を重視しています。 第21回となる今年のテーマは「若手のその先へ」で、自然言語処理研究の歩みと、研究者・技術者の中長期的なキャリアも主題に据えられていました。

ハッカソン (8月16日)

1日目には、引用文脈と引用先論文の情報から引用の妥当性を判定する「citation hallucination(引用ハルシネーション)」をテーマにした分野交流ハッカソンが行われました。 ハッカソンには、推論時にLLMを使わない独自モデル部門 (OMD) と、LLMに与える少数事例を設計する事例設計部門 (ICL) の2部門がありました。 チームは事前アンケートをもとに運営委員の皆さまによって編成され、私のチームはB2が1名、B4が1名、M1が2名、M2が1名、社会人が1名の計6名で構成されていました。

私はOMDに「ずんだシェイカーズ」 (omd-8) というチームで参加しました。 チーム内では、2つのベースラインをそれぞれ改善するため、「特徴量を用いたロジスティック回帰」と「事前学習モデルのファインチューニング」の2グループに分かれ、私は後者を担当しました。 私のグループでは、事前学習モデルへ入力する情報量に着目しました。論文の概要が入力長128 tokensで途中までしか使われていなかったため、最大入力長を2048へ延ばし、著者名と出版年も入力に加えてファインチューニングしました。 一方、もう一方のグループでは、著者情報や出版年、本文の結論部分など、判定に役立つ特徴をデータから設計し、文埋め込みと組み合わせてロジスティック回帰による判定を改善しました。 最も良かったのは最大入力長を2048にしたモデルで、OMDの8チーム中5位でした。 受賞には届きませんでしたが、チーム全員にとって初めてのハッカソンで、話し合いの時間を重視して取り組み、短時間で複数の手法を比較できたことは、良い経験になりました。 また、チームの取り組みを3分間で伝える最終発表スライドの作成も担当しました。

今回のハッカソンはコーディングエージェントを利用できる環境でしたが、資料ではまず学習・検証データをよく観察することが勧められていました。 また、OMDは機密性やコストのためLLMを使えない場面も想定した部門で、AIツールの活用が広がる中でも、データを自分の目で確かめ、状況に応じたNLPの手法で課題を解く力が大切だというメッセージを感じました。

チュートリアル (8月17日、8月18日)

チュートリアルセッションでは、以下の2件のチュートリアルが行われました。

「現場から世界標準へ:QRコード開発に学ぶ『読める』の設計原理」
長屋 隆之 氏 (株式会社豊田中央研究所)

1日目は、QRコード開発を題材に、現場の制約や評価指標、想定された失敗パターンを踏まえ、認識と符号化がどのように統合して設計されたのかが解説されました。 その中では、位置検出や歪みの補正、誤り訂正など、実際の利用環境で素早く正確に読み取るための具体的な仕組みも紹介されました。 デンソーが開発したことは子どもの頃から知っていましたが、QRコード内の情報が右下から縦方向に折り返すように配置されていることなど、技術的な仕組みについては知らなかったため、とても興味深かったです。

「言語モデルの70年:シャノンから大規模言語モデルへ」
岡野原 大輔 氏 (株式会社Preferred Networks / Matlantis株式会社)

2日目は、シャノンによる言語モデルの考え方から、n-gram、ニューラルネットワーク、Transformer、大規模言語モデルへと至る約70年の発展が、講演者自身の研究経験とともに紹介されました。 後半では、潜在空間での推論が、実現すれば大きな進展につながる可能性のある技術として紹介されました。 また、ハルシネーションや、LLM内部の処理を理解して制御することも、未解決の課題として挙げられました。 さらに、2006年頃には、言語モデルが多くの問題を統一的に扱う現在の姿まで想像できていなかったことを、反省として振り返っていた点が印象に残りました。

ポスターセッション(8月17日〜8月18日)

2日間で5つの一般ポスターセッションが行われ、それぞれのセッションには約50件の発表がありました。 件数が多いので、事前にどの発表を聞きに行くかを選んでおくことが大切です。 また、自然言語処理やその周辺領域で活躍する研究者や技術者が、現在の研究開発とこれまでのキャリアを紹介する招待ポスターセッションも行われました。 研究の話だけでなく、進学や仕事の選択についても聞くことができる貴重な機会でした。

今年から、ポスターにリボンを付ける企画が導入されました。 用意されたリボンは、ポスターの第一著者が学生であることを示す金色と、研究をさらに良くするための本気のフィードバックを求めていることを示す赤色の2色です。 この取り組みにより、発表者と参加者の交流がより深まったと思います。

ポスター発表の様子

私は「観光キャッチコピー自動生成に向けた学習用データセットの構築」という発表をしました。 YANSで主著者として発表するのは、昨年に続いて2回目です。

発表では、多くの方からフィードバックをいただき、さまざまな視点から研究を見直すことができました。 いただいた意見を今後の研究に生かし、研究をより良いものにしていきたいです。


交流企画について

交流企画として、2日目の昼に希望者向けのカジュアル交流会、夜にナイトセッションが行われました。 また、事前に印刷して持参する参加証は、名前と所属が大きく表示された名札として使われるため、初対面の方にも声をかけやすく、交流のきっかけになりました。 ナイトセッションでは、牛タンや白石温麺(うーめん)といった宮城県の名物などを味わいながら、参加者同士でYANSの感想を語り合い、楽しい時間を過ごしました。 中でも白石温麺と天ぷらが特においしく、れんこん天が印象に残りました。 また、ポスターセッションの会場の入口には、数量限定で萩の月、すずめ饅頭も用意されていました。

ナイトセッションで提供された白石温麺と天ぷら

まとめ

今回のYANSでは、ポスター発表でいただいた意見をきっかけに、研究を別の角度から見直すことができました。 他の方の発表にも刺激を受け、ハッカソンや交流企画では所属や学年の異なる参加者と話すことができました。 また、昨年のYANSで知り合った方と1年ぶりに再会できたことも嬉しかったです。
3日間で得た気づきやつながりを、これからの研究に生かしていきたいと思います。
この貴重な機会を与えてくださった、YANS運営委員の皆様、スポンサー様、そして参加されたすべての方々に感謝申し上げます。
素晴らしい3日間をありがとうございました。

帰る際に仙台駅で撮影した発車案内とずんだシェイク

参考リンク

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