Yoshiga's Wales & Cardiff Page

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映画「ウェールズ山」質問集

ガースの丘


映画の舞台は?

「ウェールズの山」は、カーディフの近くのTaff's WellにあるGwaelod-y-Garthの村の、その北にあるガース山(丘)である。

ロケ地は?

中部ウェールズのイングランド国境に近いLlanrhaeadr ym Mochnant(ランライアドル・アム・モハナント)であった。この村は、ウィリアム・モーガン(後の主教)が聖書のウェールズ語翻訳を完成させた場所でもある。

好色モーガン(Morgan the Goat)は単に好色だけか?

ヤギは繁殖力が強いことから、淫乱、好色を連想させる。また中世の人々は悪魔の正体をヤギにかたどった。聖書の「マタイ伝」では"separate the sheep from the goats"という表現があり、「価値あるものとないもの、善人と悪人を分かつ」の意味に用いられている。

その後、馬の代わりにヤギに乗ったウェールズ人が描かれる。ヤギはウェールズを連想させる動物となる。現代ではウェールズの軍楽隊ではヤギがマスコットとなっている。したがって、この映画での「ヤギのモーガン」は、単に好色だけでなく、ウェールズを象徴するものであり、この映画においても、ウェールズのために大いに活躍する。

集会場に掛かっている「PLANT OWAIN」の標語?

英語ではなく、ウェールズ語である。plantは「子供たち」を意味し、OWAIN(オワイン)とは、西暦1400年、イングランドに対し独立戦争(反乱)を起こしたウェールズ人オワイン・グリンドュルのことであり、その意味は、「オワインの子供たち」である。すなわち、この集会場に集まっている人々はあのオワインのこどもたちであり、今再び、ウェールズの山を否定するイングランド人に対して、反乱を起こすことを暗示させる小道具である。

山の絵

モーガンのパブに掛かっている額の中の絵は「ファノン・ガルー」である。一方、教師デーヴィスの教室のピアノの上の絵はアルプスの山である。

教室に掛かっている肖像画?

軍服を着た国王か?ウェールズの教室には当時のウェールズ人の首相ロイド・ジョージこそ似つかわしい。これは当時の教育のイングランド化の象徴か。

何のためモーガンは砂糖1kgを使ったか?

その次のシーンにあるように、車を故障させるためである。(悪用されるのを防ぐために詳細は省く)

何故ウェールズ旗ではなくユニオンジャックか?

最初のモーガンのパブの前のシーンで、旗竿にひらめいているのはユニオンジャックである。1917年当時まだウェールズ旗は一般的ではなかった。ウェールズ旗が「公認」されるのは、第二次大戦後である。

モーガンは学があるか?

モーガンが牧師と出くわしたとき、かれは、

Ah! Good mornin', Reverend Jones. I see God's in his heaven and all's well with the world.

と言う。このかれの言葉は、19世紀の英国詩人ローバート・ブラウニングを引用したものである。(したがって、モーガンは学がある。でも、これぐらいは、イギリス人だったら誰でもしっているのか???)それは日本では上田敏の名訳「春の朝」で知られている次の詩である。

Pippa's Song

The year's at the spring
And day's at the morn;
Morning's at seven;
The hill-side's dew-pearled;
The lark's on the wing;
The snail's on the thorn;
God's in his heaven--
All's right with the world!

時は春、
日は朝(あした)、
朝は七時、
片岡に露みちて、
揚雲雀(あげひばり)なのりいで、
蝸牛(かたつむり)枝に這(は)ひ、
神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。