ウェルッシュ・ラビット(カウス・ポビ)
ウェールズ人の好物にチーズトーストがある。一般にウェルッシュ・ラビット(ウェールズのウサギ)と言われているが、ウェールズ人はこれに目がない。今でもこのチーズトーストとウェールズ人に関するジョークが、いともそれらしく語られる。
天国の門の鍵を預かる聖ペテロは最近天国の住人から苦情を多く受けていた。近頃天国にウェールズ人が増えすぎ、天国の安寧が妨げられているというのである。訴えによると、ウェールズ人は朝から晩まで大声で歌を歌い、騒がしいことこのうえない。なんとかしてくれ、ということである。そこで聖ペテロは一計を案じた。ある日彼は天国の門を大きく開け放ち、門の外に1人の天使に立たせ、大声で次のように叫ばせたそうである。
「みなさ〜ん、ウェルッシュ・ラビットが出来ましたよ〜!」
これを聞いた天国のウェールズ人たちは、我先にとその声のする方向に駈けだした。彼らは次々に天国の門を出ていった。最後の1人のウェールズ人が門から出ていったことを確認した聖ペテロは、門を閉じることを命じた。このようにして、それ以来天国は以前の静けさを取り戻したという。
この話はテューダー王朝の宮廷で大いに好まれたという。作者は詩人のジョン・スケルトンだと言われている。この背景には、ヘンリーが王位についたとき、宮廷下級職に多くのウェールズ人を採用したため、宮廷ではウェールズ人が幅をきかせ、また聞き慣れないウェールズ語が蔓延したことがある。このジョークは、そのあたりの事情をふまえたものかもしれない。
(なお、caws pobi(welsh rabbit) は welsh rarebitともいうが、この表現ははヴィクトリア朝の婉曲的な、お上品な言葉として中産階級で使用されたというが、今ではどちらかというと影の薄くなった表現である。)
つぎに、ウェルッシュ・ラビットの調理法を記す。へたに訳し、とんでもないものが出来るのを恐れ、あえて英文を掲げる。
INGREDIENTS
120g (4 ozs) grated cheese
3 tablespoons of milk
30g (1 oz) butter
Pepper, salt Mustard if required
Beer if required
Slice of toast
Place the cheese and milk into a saucepan and slowly melt adding the salt and pepper and stir. A little mustard or beer can be added if desired. When piping hot pour the mixture over the toast. Brown under the grill.