調査地内各淵には12匹のカワムツを確認できたが、洪水による影響で確認出来なくなってしまった。その後、上の調査地点を定め、11月上旬から12月下旬に28日の観察を行い、カワムツがうまく確認できた8日に各30分程度調査した。調査場所の平板測量を行い、作成した平面図に定位していた場所や行動を記入した。また、水面上から見て確認できないときは水中に入り、棒で突ついたりして脅かすことで個体数や行動を観察した。

A割田川

 7月から9月は、常にカワムツを観察できる状態だったが、9月下旬の護岸工事、10月中旬の八草川上流の溜め池工事による水の濁りのために観察を一時中断した。このため、吉田川に比べて十分な調査を行うことが困難になった。よって、カワムツの行動と個体数の変化をおおまかに観察することにした。

T.2.4.3 調査結果

@吉田川

 図17は淵の平面図で、11月上旬〜中旬の観察結果を記入したものである。体長約5pのカワムツは、淵では一番深い場所(水深約5065p)に定位しているところを頻繁に見ることができた。脅かした時の行動範囲を楕円a、bで示した。楕円b内で定位していたものが楕円a内で動き回り、しばらくすると元のb内に戻ってくるところを見ることができた。約10p前後のカワムツは、見るだけでは確認できなかったが、脅かすと石Bから石Aに移動するところを見ることができた。しかし、石Aから石Bに移動するところは見られなかった。


 


17 淵(11月上旬)

 図1811月中旬から12月下旬の調査結果を記入したものである。水温が下がってきたこともあり、カワムツの行動が鈍くなってきた。11月中旬までは深いところに定位していた約5pのカワムツは見るだけでは確認できなくなった。しかし、脅かすと石の下から約10p前後のカワムツと一緒に出てくるところを見ることができた。12月中旬には脅かしても約5pのカワムツは確認できなくなったが、約10p前後のものは石Bの下からでてくるところを見ることができた。


 


18 淵(11月中旬~12月)

 図19は石AとBの側面図である。物音に反応して逃げ込む空間を楕円で囲んで示した。その空間は石Aについては深い水深のところにあるため見えにくく、石Bは浅いところにあるため、容易にみることができた。しかし、落ち葉などが堆積していて見を隠すことができる状態であった。

 


19 石A・Bの側面図

A割田川

 7月から9月にかけての調査では大きなもので12p程度、小さなものでは1.52p程度のものが確認できた。小さなものは群れていて、瀬の少し掘れた流れの緩いところに定位していた。大きなものは行動範囲が広く、調査範囲の至るところで動き回っているところを確認することができた。どちらも人影や物音によって、水面に垂れ下がっている草の下に隠れるが、小さなものはすぐに元の場所

 

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に戻ってきて定位した。大きなものは草の下で動き回り続けるが、しばらくして見える範囲に戻ってきた。工事終了後に再び観察ができるようになった11月上旬には、以前に見られた大きなものは確認できなくなった。大きなもので7p程度、小さなもので3p程度のカワムツを確認できた。大きなものも小さなものも、以前と同じ場所で観察でき、同じような行動を見ることができた。

T.2.4.3 まとめ

 調査結果より、割田川では瀬の川底が掘れたところ、吉田川では淵の深いところで定位しているところが多く見られた。よって、カワムツが定位するためには、川底が掘れていて流れが緩くなっている場所が必要であると思われる。脅かしたとき、割田川では岸の草が垂れ下がって水面を覆ってできた空間、吉田川では大きな目の石が重なりあってできた空間に必ず身を隠すことが確認できた。すなわち、身を隠すことができる空間が河川にあることが必要であると思われる。

 

T.3. 結論

 吉田川の調査地点では、ヨシノボリ、カワムツを確認できた。これら2種類の生物が生息場所をみるとAとBのような特徴で分類できた(図20)。


 


20 吉田川における生息場所の関係

A:水深にあまり関係ない。

  石などの下に身を潜める。

B:ある程度の水深の淵にいる。

このことから吉田川ではカワムツの生息場所にはヨシノボリも生息しているが、ヨシノボリの生息場所に必ずしもカワムツが生息しているとは限らないのではないかと思われる。

 立田川周辺の調査地点では、ヨシノボリ、ドジョウ、カワムツの3種類の生物を確認できた。これら3種類の生物の生息場所をA〜Eのような特徴で分類できた(図21)。

 


21 立田川における生息場所の関係

A:石の下などで越冬する。 砂の上にいる。

B:流れの穏やかなところに定位する。

   石や草の影にいる。

C:冬に水田など泥に潜り越冬する。

D:夏に泥の上などにいる。

これから立田川では、ヨシノボリとドジョウ、ヨシノボリとカワムツの組合せの生息場所は存在しても、カワムツとドジョウが同じ場所で生息することは殆どないのではないかと思われる。

 

参考文献

1)中村義彦著:大分発のホタル情報  インター

 ネット       

2)自然環境復元研究会 編:ホタルの里づくり大

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3)川那部浩哉、水野信彦著:検索入門 川と湖の魚  

 A 保育社 pp.102117 (1989)

4)桜井淳史著:野外ハンドブック・10(淡水編)     

 山と渓谷社 pp.8283124129186187、    

 199200 (1981)

5)奥田重俊、柴田敏隆、島谷幸宏、水野信彦、    

 矢島稔、山岸哲著:川の生物図鑑 山海堂  

 pp.280283334335358363 (1996)

6)中坊徹次著:日本産魚類検索(全種の同定) 東海    

  大学出版会 pp.2422123110791082,    

 11151260  (1993)

7)川那部浩哉、水野信彦著:山渓カラー名鑑 日本

  淡水魚 山と渓谷社 pp.234239243378 

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8)斉藤憲治、片野修、小泉顕雄著:淡水魚の水田  

 周辺における一次的水域への侵入と産卵 日本

生態学会誌38 pp3547 (1988)

 

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