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縮合多環型πラジカル/オキソフェナレノキシル系

1)イントロ

オキソフェナレノキシルは当研究室で分子設計された新規中性ラジカルである。フェナレニルのa-位に二つの酸素原子を導入した下記の誘導体では、酸素原子間での不対電子の共鳴が可能であり、高い安定性が期待される。フェナレニル骨格を基盤とするが、酸素原子をπ-電子ネットワークにうまく組み込むことにより、フェナレニルのものとは全く異なる対照的な電子スピン構造が実現されている。

2)研究結果1

これらオキソフェナレノキシル誘導体の合成研究の結果、3-オキソフェナレノキシル誘導体の発生・検出に成功し、また4- および6-オキソフェナレノキシル誘導体については嵩高いt-ブチル基を導入することで空気中でも安定に単離することに成功した(J. Am. Chem. Soc., 122, 4825-4826, (2000))。また、分子内水素結合を有する6-オキソフェナレノキシル誘導体も同様に単離することができた(Org. Lett., 3, 3099-3102 (2001))。下にこれらの単離に成功したラジカル誘導体を図示した。電子スピン共鳴 (ESR) 法や分子軌道計算を用いて、これらの新規中性ラジカルのπ-スピン密度分布を明らかにした。これらの新規中性ラジカルは、広いスピン非局在化を伴った高度なスピン分極構造を有することから結晶中での分子間磁気的相互作用に興味が持たれ、固体物性の解明が今後の課題となっている。また、6-オキソフェナレノキシル誘導体は8-位に様々な置換基を導入することが可能であり、このラジカルを基盤とした高スピン分子や、電子ドナー成分を組み込んだスピン分極ドナー(Tetrahedron Lett., 42, 7991-7995 (2001)) に関する研究も行っている。

3)研究結果2:レドックス応答型スピン構造系 (Redox-Based Spin Diversity System)

オキソフェナレノキシルはフェナレニルを基盤としていることから、フェナレニルと同様に高いレドックス性を有している。そのため、中性ラジカル状態だけではなく還元体であるアニオン、ラジカルジアニオンも安定に有すると考えられる。このうち、6-オキソフェナレノキシル系については、サイクリックボルタンメトリー法によりラジカルジアニオン状態の安定性が確認でき、実際に封管中カリウムミラーで還元することにより発生させることに成功した。得られたラジカルジアニオンはESR法による測定、理論計算から中性ラジカルとは著しく異なるスピン密度分布を持つことを明らかにし、こうしたレドックスによりスピン構造が大きく変化する性質をレドックス応答型スピン構造 (Redox-Based Spin Diversity) と名付け報告している (Org. Lett. 2002, 4, 1985-1988. in: A. Kawamori, J. Yamauchi, H. Ohta (Eds.), EPR in the 21st century: Basics and Applications to Material, Life and Earth Sciences, Elsevier, Amsterdam, 2002 pp. 384-388.)。


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