トップ>研究概要>縮合多環型πラジカル/アザフェナレニル
中性ラジカルは不対電子を有する特異な電子構造を有することから、有機強磁 性体や単成分電気伝導体の構成成分として期待されている。しかし、空気中で も安定に存在する中性ラジカルの種類は非常に限られている。私たちの研究室 では新しい安定中性ラジカルの開発を目指し、フェナレニルに着目した研究を 行っている (下図)。
無置換フェナレニルは空気中では取り扱いが出来ない不安定なラジカルである。 私たちは嵩高い置換基を導入することで結晶状態として初めて単離し、フェナ レニルラジカルの固体物性における端緒を切り開いてきた [1]。また、窒素原 子を二つ導入したラジカル、1,3-ジアザフェナレニルを設計、合成、単離して、 窒素原子導入によるスピン密度分布の変調、結晶構造の変化 (下図)、それに伴 う物性の変化を明らかにしてきている [2]。また、1,3-ジアザフェナレニル系に 置換基を導入した誘導体の合成にも成功している[3,4,5]。
さらに、窒素原子効果の解明や金属錯体における配位子への展開をめざして、 窒素原子を六個導入したフェナレニル、ヘキサアザフェナレニルを設計した。 これまでに、無置換アニオン体のカリウム塩および銅錯体の合成、単離、結晶 化に成功した [6]。
[1] Goto, K.; Kubo, T.; Yamamoto, K.; Nakasuji, K.; Sato, K.; Shiomi, D.; Takui, T.;
Kubota, M.; Kobayashi, T.; Yakushi, K.; Ouyang, J.
J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 1619-1620.
[2] Morita, Y.; Aoki, T.; Fukui, K.; Nakazawa, S.; Tamaki, K.; Suzuki, S.; Fuyuhiro, A.;
Yamamoto, K.; Sato, K.;
Shiomi, D.; Naito, A.; Takui, T.; Nakasuji, K. Angew. Chem., Int. Ed.
2002, 41, 1793-1796.
[3] Suzuki, S.; Morita, Y.; Fukui, K.; Sato, K.; Shiomi, D.; Takui, T.; Nakasuji, K.
Polyhedron 2005, 24, 2618-2624.
[4] Morita, Y.; Suzuki, S.; Nakazawa, S.; Fukui, K.; Sato, K.; Shiomi, D.; Takui, T.;
Nakasuji, K. Polyhedron 2003, 22, 2215-2218.
[5] Morita, Y.; Suzuki, S.; Kawai, J.; Nishida, S.; Fukui, K.; Sato, K.; Shiomi, D.; Takui,
T.; Nakasuji, K. Synth. Met. 2003, 137, 1209-1210.
[6] Suzuki, S.; Morita, Y.; Fukui, K.; Sato, K.; Shiomi, D.; Takui, T.; Nakasuji, K.
Inorg. Chem. 2005, 44, 8197-8199.
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