微分フィルタによる透明位相物体の可視化計測

 透明位相物体とは、生物試料や工学部品など透明で光が通るとその位相のみが変化する物質である。このような物質は透明なためそのまま光を通したり当てたりしても観測ができない。この研究では、そのような物質を見えるように可視化し、さらにその形状を定量的に求める研究である。

【理論】光は面をレンズで集光すると、その焦点上にはフーリエ変換された光が得られる。その焦点上に振幅透過率がフィルタの座標に対して線形に変化するフィルタを挿入すると、像面には入力波面を微分した像ができることが知られている。入力波面の振幅をとすると、そのx方向への微分は以下のようになる。
        
 
 
この式の第1項は振幅の微分を示し、画像のエッジの検出などに古くから使われている。一方、第2項は位相の微分を示す。透明な物体に均一強度の光を通した場合は第1項は0になるため、位相の微分のみが得られる。
したがって、得られる像の光強度は
        
 
 
となる。
すなわち、位相情報が光強度に変わり可視化ができる。

【実験】HeNeレーザを光源として平行光を作り、測定対象に当てる。その透過光をレンズで集光し、微分フィルタを通した後CCDカメラで観測する。

微分フィルタを通さなかったときは平坦に見えた位相物体が、微分フィルタを通すことにより立体的に見えるようになる。

微分フィルタを通さない場合 微分フィルタを通した場合