配線

 ロボットが大きくなると当然配線も長くなり、また電源線に流れる電流も大きくなる。DSR8801クラスになると、通常で5A、瞬間的には10Aを超える電流が流れることもある(ここでいう電流は、平均電流ではなくパルス電流のピーク値をいう)。そうなってくると、ケーブルでの電圧低下が無視できなくなってくる。実際鉄人3号では1Vを超える電圧降下が観測された。こうなってくると当然トルクは小さくなり、発振の原因にもなる。また、電源線と信号線はGNDが共通のため、最悪モーションコントローラが壊れる(実際壊しました)。そこで、配線に関してもまじめに検討を行った。
 まずは、何種類かのケーブルについて特性を調べてみた。まずケーブルに5Aの電流を流し、そのときの電圧降下からケーブルの抵抗値を求めた。その結果より鉄人3号で必要とされる50cm×2(往復)のケーブルでの電圧降下を算出した。
 
 
導電部
断面積
導電部
太さ
抵抗 電圧降下
50cm×2
5A 10A 25A
K社サーボケーブル 0.13mm2? 0.4mm? 170Ω/km 0.85V 1.7V 4.3V
H社サーボケーブル 0.24mm2? 0.55mm? 65Ω/km 0.33V 0.65V 1.6V
JR社サーボケーブル 0.24mm2? 0.55mm? 65Ω/km 0.33V 0.65V 1.6V
AWG22 0.3mm2 0.6mm 40Ω/km 0.20V 0.40V 1V
AWG20(スズメッキ) 0.5mm2 0.8mm 24Ω/km 0.12V 0.24V 0.6V
AWG16(スズメッキ) 1.3mm2 1.3mm 14Ω/km 0.07V 0.14V 0.35V
AWG14(スズメッキ) 2.1mm2 1.6mm 10Ω/km 0.05V 0.10V 0.25V
※AWGとは:アメリカのケーブル規格。日本でも良く使われる。数字が小さいほど太くて抵抗が少ない。

 この結果より、ケーブルによっては電圧降下が無視できないオーダーであることが明らかになった。
 以上のことを踏まえ、電源線を検討した。また、以下の理由より中継基板を作成し、信号線と電力線のGNDを分離・絶縁した。
  ・コントローラや電源からの配線数が少なくて済む(5サーボで8本)
  ・サーボ間の電流を平均化し、電圧降下を抑える
  ・信号線と電力線を絶縁することにより、コントローラへのノイズの混入を防ぐ(コントローラを保護する)
 また、中継基板には信号線にコントローラ保護用の抵抗を入れた。

 中継基板は1枚で4あるいは5つのサーボがつながる。電源から中継基板までの電源線には5サーボ分の電流が流れるので、そのことを考慮し、例え25A流れても電圧降下が0.25VのAWG14のケーブルで配線を行うこととした。ただし、導電部が太ければ全体の外形も太くなる。そこで、皮膜の薄いテフロン皮膜のケーブルを使用することにした。
 
左から
テフロン皮膜AWG14、ビニール皮膜AWG22、JR社、H社、K社
中継基板